はじめに
シリーズ第2弾は「運輸・物流」です。TOPIX-17の「運輸・物流」は、東証33業種の陸運・海運・空運・倉庫・運輸関連の4つで構成されていて、我が家はこの4業種すべてで保有ゼロでした。
実は私は、以前の仕事で物流倉庫のシステム導入に関わっていたことがあり、個人的には馴染みの深い業界です。それでも株を1株も持っていなかったのは、どうしても**「労働集約型・激務・薄利」**というイメージが強く、株価が成長していく姿を想像しにくかったからです。
そこで今回は、4業種を1本ずつ分解して「そのイメージは本当に正しいのか」を確かめていきます。初回は陸運です。

陸運業ってどんな業種?
陸運業には、大きく分けて2つのグループがあります。
- 鉄道:JR各社、大手私鉄など
- トラック・宅配:ヤマトHD、SGHD(佐川急便)、NIPPON EXPRESSホールディングス、セイノーHDなど
同じ「陸運」でも、この2つはビジネスの中身がまったく違います。ここが今回の一番の発見でした。
陸運業 時価総額トップ5
| 順位 | 企業 | 時価総額 |
|---|---|---|
| 1 | JR東日本 | 3.93兆円 |
| 2 | JR東海 | 3.78兆円 |
| 3 | NIPPON EXPRESS HD | 1.41兆円 |
| 4 | JR西日本 | 1.38兆円 |
| 5 | 阪急阪神HD | 1.13兆円 |
出典:Strainer(2026年9月25日閲覧)
上位は鉄道会社がほぼ独占しています。宅配大手はSGHD(約9,600億円)が8位、ヤマトHD(約7,300億円)が10位です。
私たちの生活では、佐川急便やクロネコヤマトの方が身近な存在です。それでも企業規模で見ると、陸運業の中心はやはり鉄道会社なのだと感じました。
ただし、鉄道会社を支えているのは荷物の輸送ではありません。
後ほど詳しく見ますが、稼ぎ頭は旅客輸送と駅周辺の不動産です。
つまり、物流関係のニュースを見て「物流が伸びそうだから陸運株を買おう」と考えても、実際に買った会社の業績を動かしているのは旅客や不動産だった、ということが起こり得ます。東証の業種区分だけで判断せず、その会社が何で稼いでいるのかを中身まで確認する必要があると感じました。
鉄道:「薄利」のイメージとは正反対
過去最高を更新し続けるJR
JR東日本の2026年3月期は、営業収益が3兆846億円(前期比6.8%増)と5期連続の増収で、発足以来の過去最高を更新しました。営業利益も4,142億円(同9.9%増)と好調です。
JR西日本も、万博効果とインバウンドを追い風に5期連続の増収増益で、過去最高益を更新しています。
鉄道会社の正体は「不動産会社」でもある
意外だったのは、稼ぎ頭が鉄道だけではないことです。
JR東日本では、不動産・ホテル事業が前期比15.2%増の5,132億円と、全セグメントで最大の伸びでした。2026年3月開業の「TAKANAWA GATEWAY CITY」がその象徴です。JR西日本も、大阪駅・広島駅周辺のまちづくりで不動産業が大きく伸びています。
駅という「人が必ず集まる場所」を持っていることが、鉄道会社の最大の強みなのだと感じました。
インバウンドの恩恵は会社によって差がある
2026年3月期の鉄道運輸収入に占めるインバウンド収入の割合は、会社によってかなり違います。
- JR東海:9.8%
- JR西日本:5.2%
- JR九州:4.5%
- JR東日本:2.6%
東海道新幹線を持つJR東海が、訪日客の恩恵を最も受けている形です。
トラック・宅配:イメージどおりの「薄利」との戦い
ヤマトHDは値上げと人件費の綱引き
一方の宅配は、私のイメージにかなり近い世界でした。
ヤマトHDの2026年3月期は、営業利益283億円と前期から倍増したものの、期初予想の400億円を116億円下回りました。取扱数量が急減した際に、人件費や委託費をすぐには減らせなかったことが響いています。
売上が1.8兆円を超える会社で営業利益が300億円弱。利益率に直すと約1.5%です。まさに「薄利」です。
同じ宅配でも利益率に大きな差
ただ、宅配大手でも差があります。2025年3月期の有価証券報告書ベースでは、売上はヤマトHDの方が大きいものの、経常利益ではSGHDが約4.5倍の差をつけています。
「宅配は薄利」とひとくくりにせず、会社ごとの稼ぐ力を見る必要がありそうです。
「物流2024年問題」は逆風か追い風か
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働に上限規制がかかりました。いわゆる「物流2024年問題」です。輸送力の不足とコスト上昇が懸念されています。
ただ、各社はこれを機に「適正運賃」の収受を強めています。コスト上昇を運賃に転嫁できるかどうかが、物流企業の利益率を左右する最大のポイントになっています。
AI活用と今後の展望
自動運転トラックが現実に
陸運で最も大きな変化は、高速道路での自動運転トラックです。
2026年3月には、自動運転トラックが日本で初めて関東〜関西間の約500kmを、ドライバーがハンドルを操作することなく高速道路で完走しました。
国の実証プロジェクト「RoAD to the L4」には、佐川急便やヤマト運輸などの物流事業者6社と、いすゞ・日野などのトラックメーカー4社が参加しています。2030年頃の「普及期」が目標で、政府は2030年までに自動運転トラックを1,000台以上導入する方針を掲げています。
AIでコストを削る
ヤマトHDは2027年3月期の営業利益420億円を「必達」とし、その内訳としてAI活用によるコスト適正化で40億円の増益を見込んでいます。
AIによる配車やルートの最適化、需要予測などで、これまで人の経験に頼っていた部分を効率化する動きが本格化しています。
展望のまとめ
- 鉄道:インバウンドと駅周辺の不動産開発が成長のエンジン。人口減少の影響を不動産とインバウンドで補えるかがカギ
- 宅配:運賃の適正化と、自動運転・AIによる省人化で「薄利」から抜け出せるかが勝負
我が家の銘柄選びの軸で見ると
- 高配当:JR西日本は配当性向35%以上の方針で、2026年3月期は13円増配の97.5円。今後はDOE(株主資本配当率)3.5%程度を目安に安定配当を重視する方針に変更
- 安定配当:ヤマトHDは1株46円の安定配当を継続
- 株主優待:鉄道会社には乗車券などの優待を出す会社が多い
- 成長性:鉄道は不動産・インバウンド、宅配は値上げと省人化が焦点
- リスク:JR西日本は2027年3月期について、万博の反動やインフレ、中東情勢の影響で減益を計画
まとめ
- 陸運は「鉄道」と「宅配」でまったく別の業種と考えた方がいい
- 鉄道は過去最高益が続き、不動産とインバウンドが柱。「薄利」のイメージは当てはまらなかった
- 宅配はイメージどおり利益率が低く、人件費との戦い。ただし会社ごとの差は大きい
- 自動運転トラックとAIによる省人化は、2030年に向けて現実の話になりつつある
「労働集約・激務・薄利」というイメージは、宅配には半分当たっていて、鉄道には当てはまりませんでした。同じ業種の中でも、どこで稼いでいるかを見ることの大切さを実感しました。
次回は海運編です。
参考リンク
- 陸運業 時価総額ランキング(Strainer)
- JR東日本 2026年3月期 通期決算(訪日ラボ)
- JR上場4社のインバウンド収入比較(Tabiris)
- ヤマトHD 2026年3月期 決算説明会(BigGo ファイナンス)
- 自動運転トラックの開発動向(自動運転ラボ)
- 新東名での自動運転トラック実証(BUSINESS NETWORK)
※本記事は筆者の調査メモであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は2026年9月時点で確認できた情報に基づきます。


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