個人事業を廃業することになり、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を出しました。
最初は紙で郵送するつもりだったんです。ネットで調べても「e-Taxならカードリーダーが必要」「ダウンロード版はWindows専用」と書かれていて、面倒くさそうだなと。
でも実際にやってみたら、カードリーダーを買わずにe-Taxで完結できました。しかも紙で出すより楽でした。同じところで詰まっている人がそれなりにいそうなので、手順を残しておきます。
※本記事は個人の体験に基づく記録です。手続きの詳細や様式は変更される可能性があるため、実際の提出にあたっては国税庁・e-Taxの公式サイトおよび所轄の税務署でご確認ください。
結論:カードリーダーは要らない。ただし罠が2つある
先に結論だけ書きます。
- カードリーダーは不要。NFC対応のスマホがあれば代わりになる
- ただし、廃業届は e-Taxソフト(WEB版)の作成メニューに存在しない
- 作成には e-Taxソフト(ダウンロード版・Windows専用) が必要
- そのダウンロード版はスマホ読み取りに非対応(ここが最大の罠)
- 解決策:ダウンロード版で作って「切り出し」、WEB版から送信する
この最後の一手を知っているかどうかで、カードリーダーを買うかどうかが決まります。私はこれで乗り切りました。
なぜカードリーダーが要らないのか
e-Tax(Web版)には「QRコード認証」という仕組みがあります。パソコンの画面にQRコードが表示され、それをスマホの「マイナポータルアプリ」で読み込むと、スマホとパソコンが連携される。あとはスマホでマイナンバーカードをタッチすれば読み取り完了です。
つまり、スマホがICカードリーダライタの代わりになるわけです。国税庁も公式にこの方法を案内しています。iPhoneも大半のAndroidも対応しています。
問題は、この仕組みが使えるのが「e-Taxソフト(WEB版)」側だけ、という点です。
罠その1:WEB版に廃業届のメニューがない
国税庁が公開している「e-Taxソフト(WEB版)で作成可能な手続」の一覧を見ると、個人向けにはこんな手続が並んでいます。
- 所得税の青色申告承認申請
- 消費税課税事業者選択届出
- 消費税簡易課税制度選択届出
- 各種の所得税徴収高計算書
- インボイス関係の登録申請
一見それっぽく揃っているのに、「個人事業の開業・廃業等届出書」だけが入っていないんです。青色申告承認申請はあるのに開業・廃業届はない。理由はわかりませんが、事実そうなっています。
「WEB版から廃業届を出せます」と書いている解説記事もありますが、少なくとも現時点のメニューには見当たりませんでした。ここで一度心が折れます。
罠その2:ダウンロード版はスマホ読み取りに対応していない
では作成できるのはどこか。e-Taxソフト(ダウンロード版) です。こちらはWindows専用のインストール型ソフトで、e-Taxで扱える手続をほぼ網羅しています。
ところがこのダウンロード版、マイナポータルアプリが使えません。電子署名の段階でICカードリーダライタを求められます。ここで多くの人が「結局リーダーを買うのか……」となるわけです。
解決策:作成はダウンロード版、送信はWEB版
抜け道があります。ダウンロード版では署名せずにデータだけ作り、それをファイルとして書き出して、WEB版から送信するという手順です。
署名の場面がWEB版側に移るので、スマホ読み取りが使えます。国税庁のQ&Aにも正規の手順として載っています。
ステップ1:ダウンロード版で廃業届を作る
e-Taxソフト(ダウンロード版)をインストールします。ここで最初の落とし穴があります。
インストール時に「追加インストール」の画面が出るので、「申請」の税目にチェックを入れてください。これを飛ばすと、後から様式を探しても開業・廃業等届出書が選択肢に出てきません。私はここで一度やり直しました。
インストール後の流れはこうです。
- 利用者ファイルを作成する
- 利用者情報を登録する(利用者識別番号が必要)
- メニューの「作成」→「申告・申請等」を選ぶ
- 一覧から「個人事業の開業・廃業等届出書」を選んで入力する
入力項目は紙の様式とまったく同じです。
ステップ2:切り出す
作成できたら、署名せずにファイルとして書き出します。
- 「申告・申請等一覧」の画面を開く
- 作った廃業届を選択する
- 「切り出し」をクリック
- デスクトップなど任意の場所に保存する
- e-Taxソフトを終了する
.xtx という拡張子のファイルができていれば成功です。繰り返しますが、ダウンロード版では署名しないでください。署名しようとした瞬間にカードリーダーを求められます。
ステップ3:WEB版にログインして送信する
ここからスマホの出番です。
- e-Taxソフト(WEB版)にログインする(QRコード認証でスマホ読み取り)
- 「申請・納付手続を行う」をクリック
- 「作成済みデータの利用」→「操作に進む」をクリック
- 「参照」から先ほどの
.xtxファイルを選んで「次へ」 - 内容が正しく表示されているか確認して「次へ」
- 電子署名を付与して送信
この6でスマホにマイナンバーカードをタッチします。使うのは**署名用電子証明書のパスワード(英数字6〜16桁)**です。ログイン時に入れる4桁の数字とは別物なので間違えないように。
送信後、メッセージボックスに受信通知が届けば完了です。
つまずきやすいポイント
実際にやってみて引っかかった、あるいは引っかかりそうだった点をまとめます。
WEB版では内容を修正できない WEB版は送信専用です。入力ミスに気づいたらダウンロード版に戻ってやり直しになります。送信前の確認画面はしっかり見ましょう。
事前準備セットアップが必要 ブラウザに拡張機能を入れていないと、ログインの段階で止まります。e-Taxのサイトから対応するセットアップツールを落としておいてください。
Windows機が必要 これはどうにもなりません。Macしか持っていない場合、ダウンロード版が動かないので別の手を考えることになります。
紙で出す場合と比べてどうか
比較するとこうなります。
| e-Tax | 紙(郵送・窓口) | |
|---|---|---|
| 提出できる時間 | 24時間(但し、サイトのメンテナンス期間が随時あり) | 平日8:30〜17:00(時間外収受箱あり) |
| 本人確認書類 | 不要 | マイナンバーカードのコピーが必要 |
| 提出の証拠 | 受信通知が残る | 収受日付印は押されない |
| 準備の手間 | 初回はソフト導入で1〜2時間 | 印刷して封入するだけ |
| 費用 | 0円 | 切手代・印刷代 |
差が一番大きいのは提出の証拠です。2025年1月から、書面提出の控えに収受日付印が押されなくなりました。窓口に持参しても、郵送しても、受付印はもらえません。
一方、e-Taxなら受信通知(メール詳細)がそのまま提出の記録として残ります。廃業届の控えを何かの申請に添付する場面では、この差が効いてきます。実際、廃業を証明する書類として「e-Taxの受信通知」を挙げている公的機関の案内もあります。
なお郵送する場合、送り先は税務署ではなく国税局の業務センターになっているケースが増えています。内部事務のセンター化が進んでいるためで、所轄の税務署のページに送付先が明記されています。宛名欄に書く「○○税務署長 殿」はそのままで、封筒の宛先だけがセンターになる形です。ここを間違えると転送で時間を食うので、郵送派の人は必ず確認してください。
廃業届と一緒に検討する書類
廃業届だけ出して終わり、とはいかない場合があります。
所得税の青色申告の取りやめ届出書 青色申告の承認を受けていたなら提出します。期限はやめようとする年の翌年3月15日なので、廃業年の確定申告と一緒でも間に合います。廃業届の様式には「取りやめ届出書の提出の有無」という欄があり、ここで「有」を選んだのに出さないと照会が来る可能性があります。選択と実際の提出は揃えましょう。
消費税の事業廃止届出書 課税事業者だった場合やインボイス登録をしている場合に必要です。免税事業者でインボイス登録もなければ不要です。
給与支払事務所等の廃止届出書 従業員や専従者に給与を払っていた場合に提出します。
都道府県への事業廃止の申告 個人事業税の関係で、都道府県税事務所にも別途届け出が必要です。税務署に出しても都道府県には伝わりません。様式も期限も自治体ごとに違うので、お住まいの県税事務所のサイトを確認してください。
提出期限は緩和されている
意外と知られていませんが、廃業届の提出期限は緩和されました。
従来は「廃業した日から1か月以内」でしたが、2026年1月1日以後の廃業からは「その年分の所得税の確定申告期限まで」になっています。慌てて出す必要はなくなったわけです。
とはいえ、忘れるくらいなら早く出したほうがいい書類ではあります。青色申告の取りやめや消費税の届出とセットで考える必要もあるので、廃業を決めたタイミングで一通り整理しておくのがおすすめです。
まとめ
- 廃業届のe-Tax提出にカードリーダーは不要
- ただしWEB版に様式がないので、ダウンロード版で作成→切り出し→WEB版で送信
- ダウンロード版で署名しようとするとリーダーが要る。署名はWEB版側でやるのがコツ
- インストール時の「追加インストール」で「申請」を入れ忘れない
- 収受日付印が廃止された今、提出の証拠が残るe-Taxの価値は上がっている
正直、最初は「紙のほうが早いのでは」と思っていました。実際、1通だけ出すなら郵送のほうが手数は少ないと思います。
ただ、青色の取りやめ届も一緒に出すとなると話は別で、まとめて送信できるe-Taxのほうが結果的に楽でした。何より、受信通知という形で「確かに出した」記録が残るのは精神衛生上いいです。封筒を投函したあとの「ちゃんと届いたかな」がないので。
同じところで止まっている人の役に立てば幸いです。
※本記事は個人の体験に基づく記録です。手続きの詳細や様式は変更される可能性があるため、実際の提出にあたっては国税庁・e-Taxの公式サイトおよび所轄の税務署でご確認ください。

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